メイラックスの薬物動態
24年の初夏に診断されてから1年半になるわけだが、どうも半年ごとくらいに鬱病の相が変わっている感じがある。去年の秋頃は元気で、卒論の進捗に特段問題はなかったにもかかわらず、その締切が迫るごとに急激に症状が悪化し、結局今年度の提出を諦めたところなのだが、それ以来不安症状がひどい。動悸があるのは半年前の一時期もそうだったが、今度はいよいよ自律神経がおかしくなっていて、なにかをしなければいけないという焦燥感はあるのになにもしたくはなく、そのうえ常に緊張しているのでなにをしようとしてもすぐに集中が切れてしまう、というような症状になってきた。
それで数日前からメイラックスという抗不安薬を処方されているのだが、この薬は効果が出るまで数日から一週間かかると言われる。他のことが手につかないので、簡単なモデルでこの薬の血中濃度の推移を計算してみることにする。ところで、本当にいい時代になったもので、ブログに数式対応を与えるために私がすべきことはastro.config.mjsに数行書き加えることだけだった。
最も単純な薬物動態学のモデルでは、薬物は投与されてから短い時間 tmax で最高血中濃度 Cmax に達し、その後おおむね指数減衰に従って血中濃度が低下していく。指数減衰の速度は典型的に半減期 t1/2 で表現されるから、つまり
C=Cmax2−t1/2t
ということである。これを時間間隔 τ で投与することを考える。なお、 tmaxはτ に対して十分小さく、無視できるものとする。実際、メイラックスの場合はそこそこ小さい。また、投与のたびに、その時点の血中濃度に単に Cmax が加算されると考える。
すると、 n 回目の投与直後の最高血中濃度 Cmaxn は次のように求まる。
Cmaxn=i=0∑n−1Cmax2−t1/2nτ=Cmax1−2−t1/2τ1−2−t1/2nτ
一方で、 n+1 回目の投与直前の最低血中濃度 Cminn はこれに単に τ ぶんの減衰率を掛けたものである。
Cminn=2−t1/2τCmaxn
次の n+1 回目の投与がこの差 Cdipn=Cmaxn−Cminn をちょうど埋め合わせるようになったときに平衡状態に達したと考えることができるだろう。ところが、
Cdipn=(1−2−t1/2τ)Cmaxn=(1−2−t1/2nτ)Cmax
である。つまり、これは漸近的な現象である。 rn=1−2−t1/2nτ と置いて、これの変化を実際に調べよう。上で与えたメイラックスのリンクは KEGG MEDICUS のそれである。そこには基本的な薬物動態のパラメータが記載されている。メイラックスの場合、 t1/2≈60-200h とある。また、私は一日一錠として処方されているから、 τ=24h である。すると、
t1/2=60 の場合
| n | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 10 | 12 | 14 |
|---|
| rn | 0.24 | 0.43 | 0.56 | 0.67 | 0.75 | 0.81 | 0.86 | 0.89 | 0.94 | 0.96 | 0.98 |
t1/2=200 の場合
| n | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 10 | 12 | 14 |
|---|
| rn | 0.08 | 0.15 | 0.22 | 0.28 | 0.34 | 0.39 | 0.44 | 0.49 | 0.56 | 0.63 | 0.69 |
運が良ければ1週間のうちに8割に達するが、運が悪いと2週間経っても7割程度らしい。効果が出るというのと平衡に達するというのとはまったく別のことらしいと分かる(それはそうだ)。また、実際には生理学的なあれこれがあってこんな単純なモデルには従わないであろう。私は医学についてほとんどなにも知らないので、これは高校数学を使ったお遊びだと断っておくことしかここではできない。
みなさんも自分が処方されている薬で計算してみると楽しいかもしれない。お大事に。